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Data Mover Challenge 2023で Most innovative for HPC uses 賞を受賞 (中村遼准教授、空閑洋平准教授、明石邦夫助教)

東京大学情報基盤センター ネットワーク研究部門の中村遼准教授、データ科学研究部門の空閑洋平准教授、情報セキュリティ研究体の明石邦夫助教らが、世界の研究教育ネットワークを使った高速データ転送のコンペティション Data Mover Challenge 2023 において Most innovative for HPC uses 賞を受賞しました。

研究チームは、multi-threaded scp (mscp) というソフトウェアを開発し、コンペティションに参加しました。mscp は、ネットワークで接続された遠隔地のコンピュータにログインするために最も広く一般的に使われている SSH(Secure Shell) と呼ばれるプロトコル(接続の仕組み)を利用し、多数の接続を同時に行うことで高速にファイルを転送できるようにしたソフトウェアです。GridFTPなど、他にも高速ファイル転送ツールはいくつかありますが、それらは独自のプロトコルを使うため、転送元と転送先のコンピュータに専用のソフトウェアをインストールし、ネットワーク環境に合わせた複雑な設定を行う必要があります。一方、mscpでは、多くのコンピュータにすでにインストールされているSSHを使うため、ユーザーは特別なサーバーソフトウェアなどをインストールする必要はなく、SSHでリモートログインできる環境であればすぐにmscpを使い始めることができます。

mscpを使うのは、SSHと同じく多くのコンピュータで使えるscpコマンドを使うのと同じくらい簡単ですが、Data Mover Challenge 2023 の実際の転送では、通常のscpよりも最大で240倍高速(オーストラリアから日本への転送)という結果となりました。


mscpを用いた同時接続数と転送速度の関係の試験結果。この試験の条件では8接続まで接続数を増やすことで転送速度が速くなるのが見られる。

授賞式は2月22日、豪州シドニーで開催中の Supercomputing Asia 2024 で行われました。

今回の受賞に際し、中村遼准教授は、「今回の受賞を励みに、mscpが広く使われ、コミュニティに貢献できるよう、引き続き開発を続けてまいります。」と述べています。

mscpのソフトウェアは以下のURLでオープンソースとして公開されています。
https://github.com/upa/mscp

また、mscpに関する論文は、2023年6月に米国オレゴン州ポートランドで開催された国際会議 Practice and Experience in Advanced Research Computing 2023 (PEARC 23) に採録され、オープンアクセスでどなたでも読むことができます。
https://dl.acm.org/doi/10.1145/3569951.3597582